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ば、災害は発生しなかったのではないでしょうか。
被災者は網入れ担当であり、特に船倉内作業には、被災者を必要とする事情はなかったようです。
自主的に手伝ったことが災害を招きました。
指示のない単独行動、これには船内での指揮命令の方法に、何らかの欠陥があったと思われます。
指揮のないまま作業を行わせると、勝手な行動を取り、それが無理な動作につながります。
班としての連携もスムーズにいかず、結局災害に結び付きやすくなります。
一方、作業環境はどうであったのでしょうか。
照明は十分で問題はありませんでした。
作業上の問題もあると思いますが、災害箇所のベルトコンベアーを乗り越えられないように、側面を高くしたり、手摺りを付けるなど、「不安全な状態」を無くすために、設備改善について、検討の余地があると思います。
なお、本船の船舶所有者は、他にエビ籠漁船を所有していますが、両船とも乗組員は固定されていて、船内作業には慣れています。
死亡を含め、過去にも大きな船員災害はありません。
さらに、毎年行われる安全講習会には、全員を受講させたり、船内での安全対策についても、波高や風速による作業基準を各般毎に作るなど、安全操業に努めていたことからも、今回のような重大事故が発生したことは非常に残念でなりません。
私たちは、再発防止のため、決められた通路が分かるよう、はっきりとした標識を付けること、廃棄用ベルトコンベアー入り口にカバーを設けること、不安全な行動を取らせないよう、安全教育を再度行うことなど、船舶所有者に指導したところです。
今回の災害は、漁船においては、比較的安全と思われている場所で発生しました。
船員さんからは「自分だけは大丈夫」とか、「永年同じ作業をして慣れている」との言葉も聞かれますが、船内という特殊な環境で働いている皆さんには、日常作業のどこにでも危険が潜んでいるという例ではないでしょうか。
船舶所有者、船長、安全担当者など指導的立場にある人は、さらに指導、命令を含めた安全教育と作業手順の徹底を図るように努め、また、船員さんはルールを守り、それぞれの持ち場でゼロ災害を目指し、常に安全第一を心におき、災害の防止に努めて欲しいと思います。

 

 

 

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